相談事例32:父が亡くなり、私(妹)と兄が相続人となった。兄は父から不動産の生前贈与を受けていたが、父が亡くなる前に当該不動産は火事で焼失していた。この場合、上記生前贈与が特別受益にあたるとして、持戻しを主張することができるか?

相談事例32:父が亡くなり、私(妹)と兄が相続人となった。兄は父から不動産の生前贈与を受けていたが、父が亡くなる前に当該不動産は火事で焼失していた。この場合、上記生前贈与が特別受益にあたるとして、持戻しを主張することができるか?(茨木市在住の方)

 不動産の生前贈与は通常特別受益に当たりますので、相続人の中に不動産の生前贈与を受けたものがいれば、原則として当該不動産について相続財産への持戻しを主張することができます。 
 
 また、特別受益の評価基準時は相続開始時(被相続人の死亡時)ですが、特別受益にあたる生前贈与によって贈与された財産が相続開始時には存在していない場合であっても、生前贈与を受けた者の行為によって受贈財産(本件では不動産)が滅失した場合は、受贈財産が贈与を受けた時の状態のままであるとみなして評価することになります(民法904条)。

 したがって、当該受贈財産本件では不動産)について、特別受益の持戻しを主張することができます。
 

 ただし、不可抗力等、生前贈与を受けた者の行為によらずに受贈財産が滅失した場合は、特別受益はないものとして考えることになります。
 
 本件では、兄が生前贈与を受けた不動産が火事によって滅失したということですので、受贈者である兄の行為により火事が起きたといえるのであれば、当該不動産が生前贈与を受けた時の状態のまま存在しているものとみなして評価することになりますので、特別受益による持戻しを主張することができます。
 

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大阪千里法律事務所 寺尾 浩(てらお ひろし)
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大阪千里法律事務所、代表弁護士の寺尾浩と申します。当事務所では、豊中市・吹田市・箕面市を中心に、多くの相続問題を多く取り扱っております。依頼者の想いを十分にお聞きし、その想いを実現するために徹底した調査を行い、 専門的知識・経験豊富な弁護士が、依頼者の想いが最も反映された解決案を提示し、 その実現のために、全力を尽くします。 |当事務所の弁護士紹介はこちら