遺産分割協議が完了するまでの間、遺産である収益不動産からの収益や費用は、誰に帰属するか
遺産の中に収益不動産がある場合、同不動産の遺産分割協議を行っている間も、賃借人からの賃料収入が発生しますし、管理費や固定資産税等の不動産の管理費用を支払う必要も生じます。
この賃料収入や管理費用は誰に帰属することになるでしょうか?
民法909条は「遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。」と定めています。
この規定からすると、「遺産分割によって最終的に収益不動産を取得した相続人が遺産分割協議中に発生した賃料を取得し、管理費や固定資産税等の管理費用も負担する」という結論になるようにも思えます。
他方で、相続開始~遺産分割までの不動産は、共同相続人の共有状態にあると考えられていますので、「遺産分割前に発生した賃料については、不動産持分(法定相続分)に応じて各相続人が取得する」とも考えられます。
この点に関し、最高裁は「遺産は、相続人が数人あるときは、相続開始から遺産分割までの間、共同相続人の共有に属するものであるから、この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべきであって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものと解するのが相当である。」「上記賃料債権の帰属は、後にされた遺産分割の影響を受けないものというべきである。」と判断しました。
そのため、遺産の中に収益不動産がある場合、同不動産の遺産分割協議中に発生した賃料は、原則として、法定相続分に応じて各相続人に帰属することになります。
遺産分割協議中の管理費や固定資産税等の管理費用についても、相続開始後の遺産不動産の管理によって生じた金銭債務だと考えられますので、法定相続分に応じて各共同相続人に帰属することになります。
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