遺留分額の計算方法

遺留分額の計算方法

遺留分の基礎財産

遺留分額を算出するためには、まず、遺留分計算の基礎となる財産(基礎財産)がどれくらいかを計算しておく必要があります。

この基礎財産の計算方法は以下の通りです。

被相続人が相続開始時に有していたプラスの財産の価格+贈与財産の価格−被相続人が相続開始時に負っていたマイナスの財産の価格 = 基礎財産

贈与財産には、あらゆる贈与が含まれるわけではなく、
①相続開始前の1年間になされた特別受益にあたらない贈与

②当事者双方が遺留分権利者に損害を与えることを知って行った特別受益にあたらない贈与

③特別受益にあたる贈与

に限定されます。

尚、②及び③の場合は、贈与がなされた時期は問いません。

また、贈与以外の態様であっても当事者双方が遺留分権利者に損害を与えることを知ってなした売買等の有償処分についても贈与とみなされれば基礎財産に加算される可能性があります。

 

遺留分の割合

遺留分が認められる割合については、遺留分権利者である相続人全体に遺されるべき遺産全体に対する割合である総体的遺留分と、遺留分権利者が複数いる場合の各遺留分権利者の個人的遺留分の割合である個別的遺留分とがあります。

*総体的遺留分

①相続人が直系尊属(父母・祖父母等自分より前の世代に属する血族のことで、養父母も含まれますが、叔父・叔母・配偶者の父母・祖父母は含まれません。)だけの場合

→被相続人の財産の3分の1を相続人の人数で分けます。

②上記①以外(直系卑属のみ、配偶者のみ、配偶者と直系尊属や直系卑属)の場合

→被相続人の財産の2分の1を相続人の人数で分けます。

*個別的遺留分

個別的遺留分は総体的遺留分に各権利者の法定相続分を乗じて算定します。

(例1)相続人が配偶者と子2人の場合

配偶者の遺留分率は4分の1( 1/2 × 1/2 )

子の遺留分率はそれぞれ8分の1( 1/2 × 1/2 × 1/2 )
(例2)相続人が配偶者と直系尊属1人(父母のうちの1人)の場合

配偶者の遺留分率は3分の1( 1/2 × 2/3 )

直系尊属(父または母)の遺留分率は6分の1( 1/2 × 1/3 )

遺留分額の計算方法

遺留分額は、遺留分の基礎財産に個別的遺留分を乗じて計算します。

(例1)
Aが2500万円の不動産と500万円の預金を遺して亡くなり、Aの妻BとAの子C、Dが相続することになりました。
CがAから相続開始前の1年間に1000万円の贈与を受けていた場合の各相続人の遺留分額は以下の通りとなります。

①    基礎財産=4000万円( 2500万円 + 500万円 + 1000万円 )

②    各相続人の遺留分額

B : 4000万円 × 1/4 = 1000万円

C : 4000万円 × 1/8 – 1000万 = -500万円
(-500万円となるので遺留分は0円)

D : 4000万円 × 1/8 = 500万円

(例2)
Aが4000万円の不動産と1000万円の預金及び4000万円の借金を遺して亡くなり、Aの子B、C、Dが相続することになりました。
DがAから相続開始前の1年間に2000万円の贈与を受けていた場合の各相続人の遺留分額は以下の通りとなります。

①    基礎財産=3000万円( 4000万円 + 1000万円 + 2000万円 − 4000万円 )

②    子全員の遺留分額

3000万円 × 1/2 = 1500万円

③ B、C、Dの各遺留分額

B:  1500万円 × 1/3 = 500万円

C:  1500万円 × 1/3 = 500万円

D:  1500万円 × 1/3 – 2000万円 =  -1500万円となるので遺留分は0円