相談事例21:遺産分割の協議が相続税の申告期限までにまとまりそうにないので、相続人全員の合意により、預貯金だけを先に遺産分割して相続税の支払いに充てようということになった。預貯金だけを先に遺産分割することはできるか?

相談事例21:遺産分割の協議が相続税の申告期限までにまとまりそうに
ないので、相続人全員の合意により、預貯金だけを先に遺産分割して
相続税の支払いに充てようということになった。預貯金だけを先に
遺産分割することはできるか?(吹田市在住の方)

遺産の一部だけを分割し、未分割の遺産を残してしまうと、未分割の遺産について将来紛争になる可能性が残ることになります。そのため、遺産分割をする際には、全部の遺産を1回で分割するのが原則です。
もっとも、相続人は遺産の処分権限を有しているので、遺産の一部分割も選択できるはずであり、法律上も遺産の一部分割を予定した条項があることから(民法907条3項)、実務上遺産の一部分割も許されるとされています。協議による遺産分割の場合は相続人全員の合意があれば一部分割が許されます。
ただし、後に予定されている残りの遺産分割の際に、先に分割した内容を反映させるのかどうかを事前に合意しておかないと、残りの遺産分割の際に紛争が生じるおそれがあるので注意が必要です。遺産分割調停による場合も一部分割は許されますが、一部分割と残りの遺産の分割との関係を明確に区分し、残余の遺産について調停不成立・審判移行となっても先の一部分割の合意に影響のないことを明確にしておくことが必要とされています。
遺産分割審判による場合は、一部分割を行う合理的な理由があり、一部分割により遺産全体について適正な分割が不可能にならないような場合に行うことができるとする見解が有力です。
本件の場合は、相続人全員の合意があるので、預貯金だけを先に遺産分割することはできますが、後日の紛争の発生を予防するため、残りの遺産を分割する際に預貯金の遺産分割の内容を反映させるのかどうかについても合意しておいた方がいいでしょう。

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大阪千里法律事務所 寺尾 浩(てらお ひろし)
大阪千里法律事務所 寺尾 浩(てらお ひろし)
大阪千里法律事務所、代表弁護士の寺尾浩と申します。当事務所では、豊中市・吹田市・箕面市を中心に、多くの相続問題を多く取り扱っております。依頼者の想いを十分にお聞きし、その想いを実現するために徹底した調査を行い、 専門的知識・経験豊富な弁護士が、依頼者の想いが最も反映された解決案を提示し、 その実現のために、全力を尽くします。 |当事務所の弁護士紹介はこちら