相談事例26:母が亡くなり、私と妹が相続人となった。私には母から生前贈与された不動産があり、母は当該不動産の贈与について、特別受益としての持戻しを免除する旨の遺言を残していた。この場合でも生前贈与された不動産を特別受益として遺産に加え相続分を計算しなければならないか?

相談事例26:母が亡くなり、私と妹が相続人となった。私には母から生前贈与された不動産があり、母は当該不動産の贈与について、特別受益としての持戻しを免除する旨の遺言を残していた。この場合でも生前贈与された不動産を特別受益として遺産に加え相続分を計算しなければならないか?(池田市在住の方)


生前贈与が特別受益に当たる場合、原則として現存する遺産に贈与の価額を加えて相続財産とみなし、各相続人の相続分が算定されます。これを持戻しといいます。

 

贈与については、遺産の前渡しといえないものは特別受益にあたらないとされていますが、不動産の贈与は通常遺産の前渡しといえますので、特別受益にあたります。もっとも、被相続人は持戻しの免除をすることができます(民法903条3項)。持戻しの免除は遺言によってもできますが、特別の方式が要求されているわけではありませんので、黙示のものでも構いません。

 

 

本件の場合、遺言によって不動産の生前贈与については持戻しを免除することが明示されていますので、当該不動産を遺産に加えて相続分を計算する必要はありません。

 

ただし、持戻しの免除は遺留分の規定に反しない限り認められるものですので、他の遺産が少なく、上記生前贈与が妹の遺留分を侵害する場合には、その侵害の限度で持戻しの免除の意思表示が失効し、当該不動産の価額についても遺留分を侵害する限度で妹の相続分に加算されることになります。
 

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大阪千里法律事務所 寺尾 浩(てらお ひろし)
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