相談事例44 母が亡くなり、私(妹)と兄が相続人となった。遺産として母の預貯金があったが、母の預貯金口座を管理していた兄が母の生前にそこから多額の預貯金を引き出していたことが判明した。兄が母の預貯金口座から母の生前に引き出した預貯金の扱いはどうなるか?

相談事例44 母が亡くなり、私(妹)と兄が相続人となった。遺産として母の預貯金があったが、母の預貯金口座を管理していた兄が母の生前にそこから多額の預貯金を引き出していたことが判明した。兄が母の預貯金口座から母の生前に引き出した預貯金の扱いはどうなるか?(吹田市在住の方)

遺産分割の対象は、原則として被相続人(母)の死亡時に相続財産として存在している遺産ですので、被相続人(母)の生前に特定の相続人によって引き出された預貯金は遺産分割の対象とはなりません
 

 この扱いをどうするかについては、被相続人(母)の意思に基づく引出しかどうか及び引き出された預貯金がどのように費消されたかによって異なります。
 
①被相続人(母)の預貯金口座から引き出された預貯金が被相続人(母)のために費消された場合には、単に被相続人(母)が自己の財産を費消しただけなので、遺産とはなり得ません。

②被相続人(母)が贈与の意思をもって、特定の相続人のために使用させる目的で預貯金を引き出させ、当該相続人が自己のために費消した場合は、当該相続人に対する贈与となります。この場合、特別受益の問題になります。

③特定の相続人が被相続人(母)に無断で引き出し、自己のために費消した場合は、被相続人(母)はその相続人に対し、損害賠償請求権又は不当利得返還請求権を取得することになります。そのため、預貯金を引き出した相続人に対し、その他の相続人がそれぞれの持分に応じた損害賠償請求権又は不当利得返還請求権(本件では妹の法定相続分である2分の1)を取得することになります。

③の場合は、預貯金を引き出した相続人(兄)に対し、他の相続人(妹)が各持分に応じた額を請求することになります。
 

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大阪千里法律事務所 寺尾 浩(てらお ひろし)
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大阪千里法律事務所、代表弁護士の寺尾浩と申します。当事務所では、豊中市・吹田市・箕面市を中心に、多くの相続問題を多く取り扱っております。依頼者の想いを十分にお聞きし、その想いを実現するために徹底した調査を行い、 専門的知識・経験豊富な弁護士が、依頼者の想いが最も反映された解決案を提示し、 その実現のために、全力を尽くします。 |当事務所の弁護士紹介はこちら