相談事例49 父が亡くなり、母と私(兄)と妹が相続人になった。母は高齢のため、今後妹が母の世話をする代わりに、妹が法定相続分よりも多く遺産を取得する内容で遺産分割協議を成立させたいと考えている。何か問題はあるか?

相談事例49 父が亡くなり、母と私(兄)と妹が相続人になった。母は高齢のため、今後妹が母の世話をする代わりに、妹が法定相続分よりも多く遺産を取得する内容で遺産分割協議を成立させたいと考えている。何か問題はあるか?(箕面市在住の方)

共同相続人全員の合意があれば、相続人の1人が他の相続人に対して債務を負担する内容を含んだ遺産分割協議を成立させることは可能です。

 

ただし、債務を負担した相続人が遺産分割協議成立後に債務を履行しなかった場合、問題が生じます

 

民法は、債務不履行の場合に契約を解除できる旨規定しています(民法540条以下)。

 

しかし、最高裁は、相続人が「母と同居して面倒をみる」という遺産分割協議で負担した債務を履行しなかった事案について、「共同相続人間において遺産分割協議が成立した場合に、相続人の1人が他の相続人に対して協議において負担した債務を履行しないときであっても、他の相続人は民法541条によって遺産分割協議を解除することができない。」と判断しています。

 

そのため、本件の場合、遺産分割協議成立後に妹が母親の世話をしなかった場合であっても、母親やあなた(兄)は、債務不履行を理由に遺産分割協議を解除することはできません。
なお、遺産分割協議の全部又は一部を相続人全員の合意により解除した上で、改めて遺産分割協議を行うことは最高裁も認めています。

 

このように、いったん成立した遺産分割協議を解除するのは難しいため、本件のように債務負担を内容に含んだ遺産分割協議を成立させたいと考える場合は、遺産分割協議成立後に問題が生じないようにするために、遺産分割協議の内容(違約金条項等)を慎重に検討した方がいいでしょう。
 

投稿者プロフィール

大阪千里法律事務所 寺尾 浩(てらお ひろし)
大阪千里法律事務所 寺尾 浩(てらお ひろし)
大阪千里法律事務所、代表弁護士の寺尾浩と申します。当事務所では、豊中市・吹田市・箕面市を中心に、多くの相続問題を多く取り扱っております。依頼者の想いを十分にお聞きし、その想いを実現するために徹底した調査を行い、 専門的知識・経験豊富な弁護士が、依頼者の想いが最も反映された解決案を提示し、 その実現のために、全力を尽くします。 |当事務所の弁護士紹介はこちら